1章4節348-5
盆花とは、盆に際して精霊に供える花を指す。今日では生花店等で買い求められる場合が多いが、かつては特定の時期に、自ら山に入って採取するものであった。また、盆市または草市・花市と称する盆の供物を商う市で買い求める場合もあった。
盆花はキキョウ・オミナエシなどに限るという土地もあるが、秋の花ならば何でもよいという場合もあった。これを野山に摘みに行くことを「盆花摘み」という場合があるが、13日に行われる精霊迎えの前日、11日か12日ころが多いという。盆花を山から摘んでくる事例は、正月の門松を山から採取してくる松迎えと対応するという見方がある。『先祖の話』において「桔梗の紫の蕾、又は粟花の黄なる花の穂に、みたまの宿りを想像した時代もあつたのである」と述べられるように(⑮109)、盆花は祖霊の依り代であるという解釈もある(「盆行事」『民俗学辞典』東京堂出版、1951年、531頁)。[及川]
→花見、四月始には~村々の習はし、門に祭をする、花木が庭前に栽ゑて賞せられる、花作家の内仏に日々の花を供へるやうになつた、季節信仰