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このページにあるリンクからは、本文と注釈とを同一画面で読むことができます。 自序 第一章 眼に映ずる世相 一 新色音論 二 染物師と禁色 三 まぼろしを現実に 四 朝顔の予言 五 木綿より人絹まで 六 流行に対する誤解 七 仕事着の捜索 八 足袋と下駄 九 時代の音 第二章 食物の個人自由 一 村の香 祭りの香 二 小鍋立と鍋料理 三 米大切 四 魚調理法の変遷 五 野菜と塩 六 菓子と砂糖 七 肉食の新日本式 八 外で飯食う事 第三章 家と住み心地 一 弱々しい家屋 二 小屋と長屋の修錬 三 障子紙から板ガラス 四 寝間と木綿夜着 五 床と座敷 六 出居の衰微 七 木の浪費 八... -
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このページにあるリンクからは、縦書きの版組で読むことができます。 自序 第一章 眼に映ずる世相 一 新色音論 二 染物師と禁色 三 まぼろしを現実に 四 朝顔の予言 五 木綿より人絹まで 六 流行に対する誤解 七 仕事着の捜索 八 足袋と下駄 九 時代の音 第二章 食物の個人自由 一 村の香 祭りの香 二 小鍋立と鍋料理 三 米大切 四 魚調理法の変遷 五 野菜と塩 六 菓子と砂糖 七 肉食の新日本式 八 外で飯食う事 第三章 家と住み心地 一 弱々しい家屋 二 小屋と長屋の修錬 三 障子紙から板ガラス 四 寝間と木綿夜着 五 床と座敷 六 出居の衰微 七 木の浪費 八 庭園芸術... -
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このページにあるリンクからは、節ごとの注釈をまとめて読むことができます。 第一章 眼に映ずる世相 一 新色音論 二 染物師と禁色 三 まぼろしを現実に 四 朝顔の予言 五 木綿より人絹まで 六 流行に対する誤解 七 仕事着の捜索 八 足袋と下駄 九 時代の音 第二章 食物の個人自由 一 村の香 祭りの香 二 小鍋立と鍋料理 三 米大切 四 魚調理法の変遷 五 野菜と塩 六 菓子と砂糖 七 肉食の新日本式 八 外で飯食う事 第三章 家と住み心地 一 弱々しい家屋 二 小屋と長屋の修錬 三 障子紙から板ガラス 四 寝間と木綿夜着 五 床と座敷 六 出居の衰微 七 木の浪費 八 庭園芸術の... -
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このページにあるリンクからは、執筆者ごとで読むことができます。 執筆者 岩本通弥及川祥平加藤秀雄重信幸彦田村和彦山口輝臣 -
第一章 眼に映ずる世相 / 九 時代の音
【九 時代の音】 私の新色音論は、つひ眼で見るものゝ方に力を入れ過ぎたが、是は誠によんどころ無いことであつた。音は色容しに就いて、選り好みをすることが出来ない。それ程我々は新たに現はるゝ一つ/\の音の為に、心を取られてしまひ易かつたのである。人が天然の快い物の音を記憶して、学び伝へようとしたものは僅であつた。楽器はその構造が単純であつて、多くの約束によつて辛うじて其聯想を繋ぐばかりであつた。人の音声は幾分かそれよりも自由で、稍適切なる模倣を為し得たかと思ふが、後々内容が複雑になつて来ると共に、次第に分化して符号のやうな言葉だけが激増したのである。色とは違つて人間が何の目的も無しに、作り出した音といふものも非常に多い。しかも其大部... -
第一章 眼に映ずる世相 / 八 足袋と下駄
【八 足袋と下駄】 明治三十四年の六月に、東京では跣足であり、跣足禁止はまだ少しでも根本の解決では無かつたのである。 それが忽ちにして今日の足袋⑥全盛となつたのは決して法令の力では無いのである。武家階級の上下を一貫して、素足⑧はもと礼装の一部であつた。人が是で無くては存分に走り廻れなかつたこと、それから革足袋が本来沓⑪などといふ名が現はれた。護謨や金色の小はぜの興味が、之を誘うたやうにも考へられて居るが、結局はやはり靴の間接の感化と見られる。近頃交際し始めた西洋の諸国が、今少し南の方に在つたなら斯うはならなかつたらう。帽子襟巻手袋耳袋、凡そ我々の採用した身のまはりは殆ど例外も無く皆防寒具であつた。防寒具の完備は勿論冬を面白くしてく... -
第一章 眼に映ずる世相 / 七 仕事着の捜索
【】 【七 仕事着の捜索】 ヨウフクといふ語が既に国語であると同じく、所謂洋服も亦とくに日本化して居る①のである。なまじひに其文字の成立ちを知り、此著物の伝来を詳めて新服に調和させようとした、無邪気さに歎服してもよいと思つて居る。 或は人によつては稍進み過ぎた決断のやうに、感じて居た者もあるか知らぬが、所謂洋服の採用を促したものは、時運であり又生活の要求であつた。兵士が顕著なる一つの例であるが、つまり明治四年に於て既に新たなる仕事着②をさがして居たのである。兵士の仕事着はもう古いものが用ゐられなくなつて居た。ちやうど近頃の勤労者も同じやうに、仮に独立して工夫をして見たとしても、やはり上下二つになる衣袴のぬかるみの中では、靴を下げて... -
第一章 眼に映ずる世相 / 六 流行に対する誤解
【六 流行に対する誤解】 何を一国の国風かれて漸く戸を開いたのでは無いのである。 強ひて思を構へる迄も無く、我々の色の歴史は不思議なやうに、文化の時代相を映発して居る。始めて日本に木綿の日が東雲きながらも結局は染料国産の、前途を拓いて行く機縁となつたことは、ちやうど今日の思想界とも似て居るのである。 モスリン⑦工業の急速なる発達の跡は、その一種の中間性⑦に於て、人力車などの経過と共通した点が多い。尤文化を苗床として居たことを考へると、これは確に無益なる実験では無かつた。問題はたゞその次々の実験の途中、やたらに理想的だの完成だのといふ宣伝語を、真に受けることがよいか悪いかで、所謂生活改良家⑨は少しばかりその説法がそゝつかしかつた様... -
第一章 眼に映ずる世相 / 五 木綿より人絹まで
【五 木綿より人絹まで】 是を模倣の如く又出藍しでも予定せられて居ない。少なくとも現在の実状よりは、ずつと前の方へ進み得るであらうことは、歴史の学問が之を希望させてくれるといふわけは、我々の知り又考へるべきことが、まだ幾らも残つて居るからである。境遇が我々の技芸の発達の為に有利であつたことは、将来はいざ知らず、過去に於ても悦ぶべきものが幾らもあつた。たとへば色に対する日本人の趣味性の如き、一方には以前の精神生活の影響によつて、渋さの極致①ともいふべきもの迄を会得した頃に、ちやうどアニリン色素などの応用が起つて来たのである。色の二つの種類の境目が紛乱し始めた時期まで、季節信仰②を超越したやうな余り多くの花物は入つて来なかつた。朝顔の... -
第一章 眼に映ずる世相 / 四 朝顔の予言
【四 朝顔の予言】 今度は方面をかへて、衣服調度以外のものを考へて見るに、花を愛するの情も亦大いに推し移つて居る。桜は久しい前からの日木の国の花であつたが、春毎のこと⑦であるが、上流の家では野の草を庭に咲かせようとすることを意味して居た。其うちに追々唐様の植物が渡ることになつて、邸内の色彩も単調では無くなつたけれども、それでも尚久しい間、之を以て普通民家の眼の楽みとするには至らなかつたのである。 江戸で三百年前に椿の花が流行⑧したといふことなども、到底今の者には想像し得られぬ程の大事件であつた。椿も此国の固有の木ではあつたが、元来は山や神様の杜ある人々の大規模なる花作り⑭が盛んになつた。さうして近世の外からの刺戟も大いに之を助けた...
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