靴は其の本国では脱ぐ場所が大よそ定まつて居る~我々の家では玄関の正面で、是と別れるやうな構造が出来て居る

1章7節360-8~10

ドイツやデンマーク・北欧などでは家の入口で靴を脱ぐのが一般化しつつあるが、欧米では基本的に寝室のクローゼットかベッドまで靴は脱がない。ただし、その状況は刻々と変化しており、日本では玄関口や上がり框で履物を100%脱ぐのに対し、欧米では靴を100%は脱がないわけではないといったところだろうか。だが、家の入口で脱ぐからといってドイツなどの家に、構造上、日本の玄関のような設えがあるわけではない。家のドアは単なるエントランスに過ぎず、日本のように段差があるわけでもなく、装飾は至ってシンプルである。その出入り口に土間はなく、マットレスが敷かれる程度である。一方、欧米や中国・韓国の邸宅では、塀で敷地が囲われて、ゲートもあって、家屋の出入口が必ずしも絶対的な仕切りとはなっていない。もちろん日本でも庶民にまで玄関が普及するのは、格式を求めた明治以降のことであるが、「家に上がる」と表現されるように、床は一段高く張られ、土足でそこに上がることは禁じられる。床を素足で歩く習慣は、朝鮮半島から中国江南地方や東南アジアの島嶼にかけての高床式の特徴であったが、日本ほどかしこまった玄関や下駄箱を発達させた例はなく、また韓国の小学校で2016年に上靴を廃止して以降、学校の下駄箱・靴箱で上履きに履き替えるような学校文化を有する国は、日本だけだといってよい。[岩本]

大正終りの護謨長時代+跣足足袋、地下足袋素足新旧雑処して残つて居たといふこと

ドイツ・ミュンヘンのアパートの出入口
提供:クリスチャン・ゲーラット氏提供