1章4節349-2~3
定本柳田國男集や講談社学術文庫では「一方の上流の流行の下火は、いつとなくその外側の、庶民の層へ移っていった」と「上流」という語が加筆されている。この節だけでも「流行を始めた人たちは娯楽であつたかも知れぬが、それが普及するには別に又是だけの理由があつた」(349-10~11)とか、「所謂玄人たちはもう省みなくなつてからも、変つた色々の花が地方に普及し」(350-16)とするように、流行の都市・上流における発生と、地方・庶民への文化普及の方向性を、繰り返し説いている。「流行」を始めた人たちと区別し、普通の人びとの「心の変化」(349-5)という「普及」の理由を問うことや、流行が習俗として埋め込まれていく過程を、柳田は課題に据えているといってよい。[岩本]