1章2節344-17
「染物師は其中でも比較的新しい出現」(344-17)というのは、草木染めや渋柿染めなどの天然染料で、自ら染める手染(344-18)があまねく中に現われた、紺屋のことを指している。近世、麻に代って棉の栽培が広まるにつれ、次第に藍染めが発達し、当初町住みで渡り歩きの多かった紺屋が、村に定住し始めた。『都市と農村』で「染物師が民間染料の尚盛んに用ゐられる時代に入つて来て、秘伝と花やかなる出来上りとを以て、僅かな期間に農村の嗜好を一変させ、その独自の地盤を開拓した」(「職人の都市に集まる傾向」④244-13~14)と述べるように、村々に定着した染物屋は、錬金術師や魔法使いのように特殊な能力を持つ者として、当初、異人視された。その屋敷跡を、紺屋屋敷など呼び、地名を残したところも多い。[岩本]