このプロジェクトについてabout the project
『明治大正史 世相篇』の「自序」によると、柳田國男は、執筆のための資料収集に苦労をしたといいます。各地の膨大な新聞を渉猟したようですが、柳田が求めたような緩やかな、しかし大きな生活の変化についての情報は、十分には得られませんでした。結局柳田は、自らも知っており、また読者もよく知っているに違いない「ありふれた世上の事実」をもとに『世相篇』を執筆しました。
それがこのユニークな歴史の語り方を生み出したといえます。
しかし一方で、当時の読者たちに「分かりきつたこと」は、かえって現在の私たちには、とても分かりにくいことになってしまいました。それが今日、同書を読む際の、一番の障壁になってしまっているのではないかと思われます。
そこで私たちは、現在にあっては少し説明が必要な事項を『世相篇』から洗い出し、注釈を作成することにしました。注釈では、今では分かりにくくなってしまった日常生活に関わる事物、論点の『世相篇』内部での連関や柳田の他の著書との連関、そして時代背景の説明が必要な問題や考え方などについて解説しています。この注釈により、柳田が『世相篇』に込めた問題意識をより確かに把握することできるようになれば、と願っています。
世相篇研究会一同